8.11
僕の好きな人が亡くなりました。
持病の発作だったそうです。
彼の携帯に電話をかけたのがきっかけで、彼のお母さんが教えてくれました。
彼の死は、僕にとてつもない絶望をもたらしました。
涙は今日に至ってもまだ枯れません。
今のこの気持ちは絶対に忘れてはいけないもので、何かの形に残しておきたいという思いから、久々にこのブログを開きました。
その人は、本当に僕にとってなくてはならない存在でした。
初めて会ったのは去年の12月。
「ヤリ目」でした。
はじめからセックスを前提として人と会うのが初めてで、とても緊張していたのを覚えています。
しかも彼の車でホテルまで送ってもらうことになっていて。
さらに僕は向こうの顔さえ知りませんでした。
いつもなら顔がわからない人とは会うことのなかった僕ですが、なぜかそのときは大丈夫だという気持ちが強かったように思います。
待ち合わせ場所で彼の車を待つ間もずっとどきどきしていて、落ち着きませんでした。
彼は、一見すると怖そうだけど、よく見ると整っていて清潔感のあるきれいな顔つきをしていました。
目つきは悪かったです。
セックス中もなんだか怖かったのを覚えています。
でもその後にお風呂で長い間いろんなことをしゃべって、その時間は僕にとってかなり楽しいものでした。
彼は本当にモテそうで、僕みたいなのとは全く釣り合わないくらいかっこいい人でした。
だから、会うのもこの一度きりかなって思っていたんですよね。
そしたらその後も何度か連絡が来て、彼の家に数回行く機会がありました。
そんなとき、彼はよく「お前は俺だけのもの」と言いました。
どうせ冗談だろうと軽く受け止めながらも、少し喜んでたところもありました。
でも彼には付き合ってる人がいて。
彼曰く「愛はなく、情で一緒にいるだけ」らしいのですが、やっぱり僕はただの浮気相手なんだなーとつくづく感じていました。
そんなこんなで僕は彼だけのものになれたらどんなに嬉しいかと思いながらも、向こうに別の彼氏がいることに引け目を感じ、年が明けたころからは徐々に彼から離れて行きました。
ちょうどそのあたりから、不特定多数とコンドームを使わないセックスをするようになりました。
彼からはたまに連絡があったのですが、僕は「誰ともやってませんよ」だとか「風邪ひいて今は無理です」だとか嘘をついて、彼を遠ざけていました。
そうこうしているうちに、僕は本当に体調を崩し、HIVの告知を受けました。
3月のことです。
彼には言おうかどうかだいぶ迷いました。
僕が羽目を外したセックスをするようになってからは彼とは会っていないので、彼に移したり彼から移されたりということは考えられなかったのですが、
彼に何度も嘘をついていたことで彼を傷つけることに引け目を感じてしまっていたのだと思います。
それでも彼はときどき連絡をくれ、僕の心配をしてくれました。
なので、結局全部を話しました。
他の人とたくさんセックスをした。
HIVの検査に行ったら陽性だった。
ほんとうにごめんなさい。
彼との関係は、もうそこで終わるものだと思っていました。
そうしたら、まさかの「またこいよ」って返事が。
いやいや。移っちゃうし、もう会っても何もできないですよと。
でも彼はまた会おうと言ってくれました。
世界で一番醜い存在になったと思っていたときに、僕を救ってくれたのがまさに彼でした。
本当に嬉しくて、泣いちゃって、二番目でもいいから彼のことをずっと好きでいようって感じたのがそのときでした。
それからは彼の家に行っては話したり、お茶飲んだり、マッサージしてあげたりしながら過ごしていました。
僕はどんどん好きになっていって、こんな体の自分にも少しずつ自信を取り戻していきました。
彼の恋人は夜になると彼の家に来るらしく、その時間が来るたびに僕の浮かれた気分は沈みました。
彼とその恋人との間にはもうセックスもなく、就活中の恋人が就活のために彼の家を使っているだけだと説明されましたが、やっぱり切ない気持ちは最後までありました。
6月になると、僕の試験も本格的になっていきました。
会うたびに「試験どうだった?」とか「就職したら一緒に住もうなー」とか話してくれて、だから僕も頑張れたのだと思います。
僕の病気の検査も進んで、薬を飲みはじめることになったときも彼が励ましてくれました。
彼は小さな頃から体が弱く、いまも毎日たくさん薬を飲んでいるとのこと。
1日1錠なんか余裕だよ、と。
彼はすごくしっかりした体つきをしていて、本当に強い人間になろうと努力していたのだと思います。
彼はよく僕の検査の結果も聞いてきました。
数値がよくなったらまたセックスしたいなーって。
他にも、僕が彼に恋人がいることを愚痴ると「お前が俺に病気移せば俺はお前のものだよ」なんて言ってくれて。
バカみたいなこと言ってるんですけど、そのたびに僕は嬉しくて、この先も病気に負けないで頑張ろうって思っていました。
8月は温泉旅行にも行こうって話していたんです。
二人っきりで、バスに乗って。
一度計画たてたんですけど、僕の予定が合わなそうだから別の日にしようってなっちゃって。
もう二度と行けない、旅行。
最後に会った次の日から、彼との連絡が途絶えてしました。
僕は何度もラインして、ラインの電話をかけてみても反応はなく、あー飽きられちゃったのかなと感じるようになりました。
友だちに相談してみたら、事故に遭ってる可能性もあるんじゃないか、と。
僕は彼の携帯の電話番号を知っていたことを思い出し、その場で電話をかけてみるもやっぱり出ませんでした。
もうこれで諦めよう。
そう思った矢先に知らない電話番号からSMSがきました。
彼のお母さんでした。
そうして僕は彼の死を知ることになります。
彼の命日は、僕が最後に彼に会った日の翌日でした。
彼に会った日、彼は美容院に行っていました。
生きる気まんまんで
人生を本気で楽しんでいて
僕の生きる気力になっていた彼が、どうして死んでしまったのか。
正直僕はこれからどうしていいのかわかりません。
HIVも、彼がいたから頑張ろうと思えました。
病気のことも彼のこともよく話していた僕の友だち2人が、ここ数日で僕を連れ出してくれました。
彼らがいなかったら、自分はどうなっていたんだろう。
そして、これから僕はどうなっていくんだろう。
今週は、大事な面接が2つ控えています。
今は目の前のやれるだけのことはやっておこうと思います。
未来が真っ暗になってしまいましたが、しばらくはもがきつづけます。